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決して海の向こうの難しい概念ではありません。
例えば,投資活動に資金を投入すれば出となり,売上(増)となって現金で入金されれば,入りとなります。
また,必要な経費や資材購入費用を現金で支払えば,出となります。
しかし,売上金額を計上しただけでお客さまからその金額を回収しなければ,キャッシュフローの増(お金の入り)にはなりません。
事業活動から生まれるキャッシュフローとしては,売上の現金収入や原材料・経費の現金による支払があります。
それ以外のキャッシュフローとしては,新規投資の現金での流出,銀行借入金の増・減や株式発行・償還に伴う現金の入りと出があります。
そして,常に現金での支払や入金が起こることを,キャッシュフローといい,最終的には貸借対照表(B/S)における現金勘定の金額のプラス・マイナスで表現されます。
例えば,事業運営から得られるお金を大幅に上回る設備投資を行ったとします。
その分のお金を,借入金や株式発行などによって調達すれば,現金残高は変化しません。
一方で,手元現金を取り崩して支払ったら現金残高は減少します。
大規模な投資もなく,順調な事業運営からのキャッシュインがキャッシュアウトを上回れば,現金は増加します。
ただし,このキャッシュの入りで銀行借入金を返却すれば,現金残高での変化はありません。
そして,この最終的には現金残高(ポジション)のプラス・マイナスに至る経緯を表現し,最後は期末の現金残高を表示したものが,キャッシュフロー表(キャッシュフロー・ステイトメント)と呼ばれているものです。
これに関しての詳しい説明と作成方法は,第II章で触れます。
すでにお気づきのことと思いますが,家庭での家計簿の発想に近いのがキャッシュフローであり,常に現金での決済をともなう経済行為を測定するものです。
たとえ3年分の保険料を現金で支払っても,費用として本年分のみを認識し,残りは資産化(キャピタライズ)するということはせず,常に流出したキャッシュをマイナスで把握します。
3年分のキャッシュの出が,キャッシュフローとして認識されます。
ここで簡単な例を用いて考えてみましょう(表1-2)。
今日から私が商品を毎日仕入れて,販売するとします。
商品はなんでもよいのですが,最近はやりのパソコンにしましょう。
メーカーに10万円の商品を1台注文し,支払は明日,配送は本日という条件にしました。
そして配送されてきた頃,お客様が来てそれを販売しました。
代金は15万円で明日支払ってくれることになりました。
損益計算上(P/L)は売上15万円,原価10万円,利益5万円です。
貸借対照表(B/S)では,売掛金15万円,買掛金10万円,利益5万円(株主資本の内部留保)でバランスしています。
キャッシュでの収入と支払はゼロですから,キャッシュフローはゼロです。
次の日,また同じものを,同じ条件で1台発注し,同じ条件での販売がありました。
一方,昨日のお客さまから15万円入金があり,郵便局に昨日配送のパソコン代10万円を払いました。
本日のP/Lは,昨日と同じです。
累積のP/Lは売上30万円,原価20万円,利益10万円です。
また本日付けのB/Sは,現金5万円,売掛金15万円,買掛金10万円,利益10万円です。
B/Sの左右はそれぞれ20万円でバランスがとれています。
キャッシュフローは,現金収入15万円,支払10万円で5万円の入りとなり,そのためB/Sの現金が昨日と違い5万円計上されました。
さて商い3日目は少し冒険をして,同じパソコンを同じ決済条件で3台仕入れました。
しかし拡販努力もむなしく,1台しか売れませんでした。
まずいことに,お客さまの支払は明後日でないとできないとのことです。
本日時点での累積のP/Lは,売上45万円,原価30万円,利益15万円です。
B/Sは現金10万円,在庫20万円,売掛金15万円,買掛金30万円,利益15万円となり,左右は45万円でバランスします。
本日のキャッシュフローは5万円であり,キャッシュの残高は10万円となりました。
第4日は,在庫が増えたため仕入れはしません。
売上は1台翌日払いでありました。
累積P/Lは売上60万円,原価40万円,利益20万円です。
B/Sは現金ゼロ,在庫10万円,売掛金30万円,借入金20万円,利益20万円となりました。
話は前後しますが,仕入代金決済のための現金がなく,銀行から20万円借金をしました。
さてキャッシュフローは,昨日のお客様からの入金は明日なので入りはゼロ,昨日買った3台のパソコンの支払でマイナス30万円となります。
しかし,現金残高は10万円ですから,借金をしないと30万円の支払はできません。
20万円の借金でプラスマイナス10万円のキャッシュ減となり,現金残はゼロとなってしまいました。
利益を表すP/Lだけを見ていれば,毎日5万円の利益がコンスタントにあり,累計での利益は20万円となり順調といえます。
しかし第4日目のキャッシュフローは営業レベルでマイナス30万円です。
入金ゼロで支払が30万円あるからです。
銀行借入枠が20万円以下であれば,倒産してしまいます。
20万円借金できればキャッシュフローはマイナス10万円となり,本日は倒産の危機を逃れることができます。
これが,キャッシュフローで見た実態です。
売れる見込みのない商品を大量に仕入れれば,当然その支払いがキャッシュフローの圧迫となります。
また,売上代金の回収が先に延びると支払の原資がなくなるという意味でもキャッシュフローの圧迫となります。
大変簡単な例でキャッシュフローを見てみました。
なお,この段階では,一定期間における現金ポジションのプラス・マイナスを,キャッシュフローと呼んでいます。
ここまで,単にキャッシュフローといってきましたが,実はいくつかの定義があります。
よく使われるものでは,税引後利益に減価償却を加算し,配当や役員賞与を差し引いて導かれた数値があります。
これは内部創出資金と呼ばれ,新聞等ではキャッシュフローという呼称で使われています。
しかしキャッシュフローを理解するうえでは,事業活動からのキャッシュフローと財務活動からのものとを分離する必要があります。
つまり事業に投下される資本やそれから生み出されるリターンと,事業に投下される資本をファイナンスする部分とを分けて考えるということが重要です。
これは,コインの表と裏のような関係であり。
事業でのキャッシュフローという関係となります。
資本コストである支払利息や配当は,財務活動でのキャッシュフローです。
なぜ事業活動からのキャッシュフローを分離するかというと,これが事業価値を算出するベースとなるからです。
また,キャッシュで流出する営業関連コストのみを売上から差し引いた利益を,キャッシュ利益と呼ぶことにします。
英語ではEBITDA (Earning Before Interest,Tax, Depreciation and Amortization)といいます。
これは,金利,法人所得税額,償却費を控除する前の利益という意味です。
第II章で改めて説明しますが,キャッシュ利益という捉え方は大変重要です。
減価償却はキャッシュフローの原資か 会計や財務を勉強したての人がよく抱く疑問に,減価償却はキャッシュフローの原資なのかということがあります。
費用なのになぜお金が入ってくるのか不思議になります。
これは,キャッシュフローの計算上で,税引後利益に減価償却費を加算するために陥る罠です。
加算するということは,キャッシュフロー算出上本来引くべきでないものを,利益計算上引いてしまったために後からバックしてあげるということを意味しています。
これに対して,当初から引くべきもののみを差し引いて計算されるキャッシュ利益であれば,このような誤解はありません。
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